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「―――…」
悠先輩から着信があった。
3回も。
マナーモードにしてカバンに入れっぱなしにしていたから、気付かなかった。
何も考えずに、急いでかけ直した。
呼び出し音を長く響かせて、漸く出てくれたのは、
【―――もしもし…?】
…由乃さんだった。
間違いないと思う。
声が同じだった。
【…ごめんなさい、悠、今うちに来てるの…】
咄嗟に電話を切った。
多分、話は続いたんだと思うけれど、耳が聞くことを拒否した。
ドクドクと、破裂しそうなくらいに激しく動く心臓。
なんで。どうして。
由乃さんが悠先輩の電話に出るの。
どうして、由乃さんの家に、悠先輩が…
…そう思ったはずなのに。
狂いそうなほどに、嫌だと思ったはずなのに。
心のどこか根っこの方は、
あまりに冷静だった。
この状況に、違和感を感じていない自分がいた。
ああ、行きつく先はここだったと、
受け入れている自分がいた。
だから、携帯を見つめたまま暫くの間、動くことが出来なかった。
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