駅まで少し

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カバンを両手で胸に抱え、走り出そうとして声を掛けられた。 「入っていきなよ。」 宮前くん。 彼が私の上に傘を伸ばしてきた。 「え。」 いつのまに後ろにいたのか気が付かなかった。雨音で足音も気配も気付かなかった。今日は彼についていくことは出来ないと諦めていた。 「前に入れてもらったお返し。」 覚えていてくれた。 それだけでも嬉しいのに、また並んで歩ける。 急にドキドキして、彼の顔を見て瞬きをしただけで返事がうまく出来ない。 「行くぞ。ほら、こっち寄れって。濡れるから。」 離れた私に彼が寄ってくる。
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