19人が本棚に入れています
本棚に追加
揃って足を踏み出すと傘にバラバラバラと激しく雨が当り始める。
「ありがとう。」
やっぱり彼の肩が濡れて、今日は私のスカートも濡れる。
「あの時のお礼がしたかったから。」
雨音が周りの気配を消して、黒い大きな傘が宮前くんと私だけの空間を作る。だからなのかもしれない。
少しだけ会話が出来そうな気がする。
彼は早足で歩き始める。
「あの時、結局濡れたよね?」
彼の肩は今日みたいに濡れた。
「大事なものは濡れなかったからいいんだ。」
あの封筒のことだとすぐに分かった。
最初のコメントを投稿しよう!