駅まで少し

16/31
前へ
/31ページ
次へ
揃って足を踏み出すと傘にバラバラバラと激しく雨が当り始める。 「ありがとう。」 やっぱり彼の肩が濡れて、今日は私のスカートも濡れる。 「あの時のお礼がしたかったから。」 雨音が周りの気配を消して、黒い大きな傘が宮前くんと私だけの空間を作る。だからなのかもしれない。 少しだけ会話が出来そうな気がする。 彼は早足で歩き始める。 「あの時、結局濡れたよね?」 彼の肩は今日みたいに濡れた。 「大事なものは濡れなかったからいいんだ。」 あの封筒のことだとすぐに分かった。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加