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「濡れたな。」
私のスカートを見て彼が申し訳なさそうに言う。彼がいなければスカートどころか全身ずぶぬれに違いない。
「私のせいで宮前くんも肩が濡れちゃったよ。」
「木原さんのせいじゃないよ。それにお礼だから気にすんな。」
ちゃんと私の名前を知っていたことが嬉しくて彼を見上げた。
「もう着いちゃうね。」
「…………。」
ぽろりと漏れた本音に彼が気づいたかもしれない。
『もう』に含まれた残念な気持ちが漏れ出てしまった。
黙られると急激に一人で浮かれていた気持ちがしぼんでいく。
彼はただのお礼のつもりで私を入れてくれただけなんだ。
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