第1章

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 深見玄秋の葬儀は、特練棟の大広間の中で、 密やかに、厳粛に執り行われた。 政財界、ヤクザ、芸能界から、影の黒幕と呼ばれる様な大物だけが参列した。大山は、ずっと泣いていた。 両親を早くに無くした大山にとって、深見玄秋は父親の様な存在だった。 大山は、自分が『玄体』をマスターしてさえいれば、 あの時、玄秋を助けられたかもしれないと悔んでいた。 葬式が終わった後も、独り大山は、 日本庭園奥の梅園の椅子に座って肩を落としていた。 一十三がそっと近づき、後ろから優しく包みこんだ。 大山は、一十三の手を握り締めて 「有難う。一十三さん・・・」と言うと立ちあがり、 一十三を残したまま、泉警部と一緒に、特練棟を後にした。 何か、意を決したかの様な顔だった。 そう。玄秋が殺された直後、泉警部は、 大山に、雹を倒す、ある秘策がある、と言ったのだ。 それには、大山と半田利久の力が必要だと言う。 二人は半田を訪ねて、ひまわり孤児院へ行ったのだ。 泉の話を聞いて、大山と半田は「試す価値はあるが・・・」と考え込んだ。 そして、兎に角、作ってやってみるしかない、という結論に達した。 雹は、最後に、はっきりと、一十三を殺す、と言ったのだ。 もう、倒すしかない。あの、化け物を・・・  
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