第1章

10/24

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
警察は、雹逮捕に向けて、作戦会議を開いていた。 SITと機動隊も作戦に参加している。 狙撃班は十名。あらゆる角度から雹を狙える様に配置してある。 作戦全体は、最近警視庁副総監となった、関宗介が仕切っていた。 「・・・以上で、会議は終わる。後は各班で、 十分に現場でのミーティングを行う様に。以上、解散!」 こうして、対決の舞台となる教団本部前大広場には、 あらゆる報道機関、テレビカメラが設置され、 警官三十名、刑事二十名、狙撃手十名、 SIT十名、機動隊員十名も、 持ち場の確認や、無線の確認を行っていた。 その中に、五十嵐響子、映画スタッフ、 喜多野剛監督、脚本家の湖山優もいる。 響子は撮影カメラの位置を、カメラマンと確認していた。 こんな前代未聞の映画のプロデューサーとして働けた事を誇りに思っている。 「響子ちゃん。とうとうこの日が来たね。どう?今の心境」 「湖山さん。それがなんだか、不思議なんです。ここまで来れたのって、 なんか私の力ではないという気持ちが大きいんですよ。 何か見えない大きな力によって、 計画された舞台の上の一人の役者だった様な気がしてるんです」 「へえ・・・それは僕と同じだね。 僕も脚本を書いている時、不思議な感覚があったんだ。 自分が書いているのに、誰かに書かされている様な感覚がね」 「そうですか・・・この映画の結末って、一体、どうなるんですかね。 雹が勝ったら、ジムノペティ計画は、どんどん進められて、 人類は三%しか生き残れなくなってしまうのでしょうか?」 「さあねえ・・・それは僕にも予想できないよ。 一十三くんが勝ったとしても、雹が計画をやめる確証なんて、 どこにもないんだからねえ。 僕は、雹の計画は、神の試練の計画だと思ってるんだ。 たとえ、一十三くんが勝って計画が終わっても、人類がこれまでの、 地位や権力や金ばかりを追求する生き方を反省しなければ、 また新たな雹が出てきて、新ジムノペティ計画が発動するんじゃないかな」 「そうですね・・・私もそんな気がします・・・ それじゃ、先生。私、仕事に戻ります」 「ああ。頑張って!」 湖山は微笑んでそう言った後 「ジムノペティか。確か、 神を讃える為に裸の人間達が踊りまくっていたという、 ジムノペティアという祭りが語源だったっけなあ・・・」 と、独り言を呟いた。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加