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警察は、雹逮捕に向けて、作戦会議を開いていた。
SITと機動隊も作戦に参加している。
狙撃班は十名。あらゆる角度から雹を狙える様に配置してある。
作戦全体は、最近警視庁副総監となった、関宗介が仕切っていた。
「・・・以上で、会議は終わる。後は各班で、
十分に現場でのミーティングを行う様に。以上、解散!」
こうして、対決の舞台となる教団本部前大広場には、
あらゆる報道機関、テレビカメラが設置され、
警官三十名、刑事二十名、狙撃手十名、
SIT十名、機動隊員十名も、
持ち場の確認や、無線の確認を行っていた。
その中に、五十嵐響子、映画スタッフ、
喜多野剛監督、脚本家の湖山優もいる。
響子は撮影カメラの位置を、カメラマンと確認していた。
こんな前代未聞の映画のプロデューサーとして働けた事を誇りに思っている。
「響子ちゃん。とうとうこの日が来たね。どう?今の心境」
「湖山さん。それがなんだか、不思議なんです。ここまで来れたのって、
なんか私の力ではないという気持ちが大きいんですよ。
何か見えない大きな力によって、
計画された舞台の上の一人の役者だった様な気がしてるんです」
「へえ・・・それは僕と同じだね。
僕も脚本を書いている時、不思議な感覚があったんだ。
自分が書いているのに、誰かに書かされている様な感覚がね」
「そうですか・・・この映画の結末って、一体、どうなるんですかね。
雹が勝ったら、ジムノペティ計画は、どんどん進められて、
人類は三%しか生き残れなくなってしまうのでしょうか?」
「さあねえ・・・それは僕にも予想できないよ。
一十三くんが勝ったとしても、雹が計画をやめる確証なんて、
どこにもないんだからねえ。
僕は、雹の計画は、神の試練の計画だと思ってるんだ。
たとえ、一十三くんが勝って計画が終わっても、人類がこれまでの、
地位や権力や金ばかりを追求する生き方を反省しなければ、
また新たな雹が出てきて、新ジムノペティ計画が発動するんじゃないかな」
「そうですね・・・私もそんな気がします・・・
それじゃ、先生。私、仕事に戻ります」
「ああ。頑張って!」
湖山は微笑んでそう言った後
「ジムノペティか。確か、
神を讃える為に裸の人間達が踊りまくっていたという、
ジムノペティアという祭りが語源だったっけなあ・・・」
と、独り言を呟いた。
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