第1章

11/24
前へ
/24ページ
次へ
二〇一一年十一月十一日午後九時。 「一十三さん、とうとう眠れませんでしたね」 大山が心配そうに泉警部に話しかける。 「ああ。だが、もう少しで掴めそうだと言っていた。 一十三くんは、いつも本番でなんとかしてきた子だ。 相手が強ければ強い程、その潜在能力が引き出されるんだろう。 しかし、今回は相手が悪すぎるな。 仮に、新しい技が出来たとしても、通用するかどうかは分からん。 しかし、人一人のオーラが、あんなにも巨大になるものなのかな? 大山君のオーラも馬鹿でかいが、 雹のオーラはとても人間のものとは思えん」 「ええ。いくら、二十五歳の時に、 第二の神人合一の境地に達したとはいえ、ありえないですよね」 「それにしても、半田さんってのは、 一体何者なんだ?よくあんな金属を手に入れられるもんだな」 「そうですね。一体、どんなルートを使えば、 オリハルコンなんて、手に入れられるんですかね」 「オリハルコンか。かつてあったという、 伝説のアトランティス大陸の超科学文明によって作りだされたという、 精神感応金属だよな。 身に付ける人間のオーラを吸収したり放出したりするという。 大山君から、スリングショットガングローブの事を聞いた時俺は、 その金属はオリハルコンじゃないか?と思っていたんだ。 だから、今回の一十三くんの新技を思いついたんだ」 「玄体を破る為ですね。普通のスリングショットのゴム弾だと、 雹の体をすり抜けちゃいますからね。 一十三さんの『桃幻掌』のパワーを、 オリハルコンで作った弾にうまく乗せて、 トルネード・ショットを撃てば、 たとえ雹が『玄体』を使っても、 倒せるんじゃないか、と思ったんですね」 「ああ。しかし、オリハルコンが残り三発分しか無いからな。 トルネード・ショットを撃てば、弾は夜空のかなたへ消えてしまう。 チャンスは三回だけだ」 「泉さん。俺が折角、新技の名前を考えたんですから、 それ使ってくださいよ」 「あ?ああ。確か、オリハルコン・タイフーン?だっけか?」 「違いますよ!オリハルコン・ツイスターです! 泉さん、ネーミングセンス、ゼロっすねえ」 「ちょっと間違えただけだ! それにしても、雹の野郎、遅えな。もう九時過ぎてるじゃねえか」 「そうですね。一十三さん、もう広場の真ん中で待ってるのに」
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加