第1章

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しかし、雹は平然と歩みを進める。 その場にいる全員が驚愕の表情となる。 雹がピンマイクを通して 「無駄ですよ。私に物理的な攻撃は効きません」と言う。 「そんな、莫迦な!撃て!足だけじゃなくていい! 射殺を許可する!一十三くんを守るんだ!」 その声に反応した狙撃隊員は、続けざまに雹を撃ちまくった。 しかし、雹の服に穴は開くのだが、 雹の体からは、一向に血が出ないし、 平気な顔で歩き続けている。 そうして、ようやく無駄だと悟ったらしい。 「やめ!撃ち方、やめ!」と、無線が飛ぶ。 「ダメだ。あいつは人間じゃない」 「・・・気づいていただけた様ですね。 そうです。技名は『玄体』と言います。 私が殺した神人、深見玄秋の得意技ですよ。 人間の肉体の波動を、魂の波動、神の領域にまで高めます。 すると、物質的な攻撃は、全てすり抜けてしまうのです。 神仙界の技の奥義です。 第二の神人合一の境地に到達できた者だけが会得可能な技です。 それから言っておきますが、私と一十三くんとのこの闘いに、 何人たりとも参加は許しません。 一十三くんが勝った場合、ジムノペティ計画は中止しますが、 誰か一人でも、この闘いを邪魔する者があれば、 たとえ、一十三くんが勝ったとしても、ジムノペティ計画を続行します。 まあ、一十三くんの勝つ可能性は、今の所、限りなくゼロですが」 雹のこの言葉に、一十三が呼応する。 「うん。確かに、今のままだと、勝てる気がしないですね。 でも、もう少しで、何かに届きそうな気がするんです」 一十三も、ピンマイクを着けているので、 一十三の声は、全世界の生中継を見ている人々に聞こえている。 だが、一十三は、イヤホンをつけているわけではないので、 全世界の人々や周囲の人達の応援する声は、届いていない。 全世界が緊迫し、見守る中、二人の距離が縮まる。 雹があと五メートルの地点にさしかかった。 一十三の闘氣が、極限まで上がる! スリングのゴムを四回転ひねり、オリハルコン弾を装填し、 ゆっくりと、限界まで、ゴムを引き絞る。 一十三のオリハルコン弾を持つ右手に、 白く光り輝くパワーが凝結する。 雹の足が止まる。 想像以上の一十三の闘氣と練氣に、一瞬ひるんだのだ。 一十三が、雹の僅かにゆらいだオーラを見逃さなかった。 オリハルコン・ツイスターを放つ! 弾は、時速四千二百キロのスピードで、雹の心臓を正確に貫いた。 雹の体から白い光が消える。
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