第1章

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観客全員、雹を倒したかに思えた。 だが、雹の体から、再び白い光が放たれる。 「ふう、驚いた。そんなフラフラの体で、 よくそんな氣を練り上げたものですねえ。 流石です。武もびっくりしてますよ」 「えっ?武さんを、どうかしたの?まさか、武さんを拉致したの?」 「まあ、そんな様なものですかね。 武は本気であなたに恋をしてしまったらしい。 女とは、本当に魔物ですよ。 崇高な理念をいとも簡単に打ち砕いてしまう。 確かに、あなたは美しい。 しかし私を殺したら武の命も終えますよ」 「卑怯者!私が武さんを愛してる事を知ってて人質にとったんですか?!」 「いいえ。そうではないですが、最早、 そんな事を言ってられる立場ではないでしょう、あなたは。 全世界の九十七%の人々の命が懸っているのですよ。 あなたが私に勝てなければ、私は計画を進めます。 全世界の人間達に『ジムノペティ』を投与します。 さあ、闘いを再開しましょう」 雹は凄まじい勢いで一十三に攻撃する。 一十三は避け切れず、二、三発、喰らってしまう。 後方へ吹き飛んだ一十三は、なかなか起き上がれない。 特練棟メンバーも、全世界の人々も、ああっと声を上げてしまう。  「頑張って!一十三ちゃん!」  「勝って!一十三ちゃん!」  「負けないで!一十三ちゃん!」  テレビ中継を見ている人達の意思が、 だんだんと一つになってくる。 すると、一十三の魂の奥から、不思議な力が沸いてくる。 「全世界の人々の想念エネルギーが一十三さんに集まり始めたわね」 神田美鈴が呟く。 一十三は、ゆっくりと立ち上がり、 二弾目のオリハルコン・ツイスターの構えを取る。 闘氣が一弾目よりも更に上がっている事に雹が驚く。 「もう、氣力が尽きたと思ったら、 どこにそんなパワーを隠し持っていたのか・・・ まあいいでしょう。やってみなさい」 一十三は、意識が途切れそうになりながら、 右手のオリハルコン弾に氣を集中させる。 一弾目よりも更に強く、白金色の光が放たれる! 雹の闘氣も更に輝きを放つ。 一十三は、自分の右手が爆発しそうになる様な感覚を受けた瞬間、 オリハルコン・ツイスターを放つ! 弾は雹の心臓を正確に貫き、夜空へ消える。 しかし、今度は雹のオーラに全くダメージを与えられていない!
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