第1章

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一十三は、そんな雹を見て肩を降ろす。 「やっぱ、ダメか。 折角、オリハルコン・ツイスターを会得できたのに。 それでも、あなたには通じなかった。 もう、私のやれる事は無いです。雹さん。私を殺してください。 それで、引き換えに、ジムノペティ計画をやめてください」 「そういうわけにはいきません。あなたが敗れたら、 私は、ジムノペティ計画を続行しますよ」 そこへ大山が声を上げる。 「一十三さん!あきらめてはダメです!自分を信じてください! あなたなら、雹に勝てます!」 「大山さん・・・そんな事言われたって私、 もう、体に力が入りません。倒れそうです」 「おやおや。もう、私が手を下すまでもなく、 一十三くんは死にそうですね。心臓が止まりかけてますよ」 雹がそう言うと、全世界の人々が、祈り始めた。 「一十三ちゃん!死なないで!」と。 だが、一十三は、もう限界だった。 心臓がズキズキと痛く、苦しくて倒れたかった。 (もう、私、十分頑張ったよね。もう、倒れても、いいよね?) 一十三の体がゆっくりと、倒れ始める。 しかしその時、一十三の心の中で、ふと、ある疑問が生じた。 (今、私、倒れようって、思ってる。 という事は、まだ、意思の力はある、って事だ。 じゃあ、まだ私、死んで無いって事だよね。 だったら、まだ闘える。まだ、やれる!) そう思って立ち上がろうとした刹那! 今まで感じたことがない、 とてつもないパワーが一十三の体に降りてきて、 魂の奥底から、爆発的な歓喜とパワーが満ち溢れた! これまでの蓄積された疲れも、 心臓の痛みも、全て吹き飛んだ! 神田美鈴が驚いて声をあげる。 「ああ・・・一十三さんが・・・ 第二の神人合一の境地に達した・・・ 雹くんが二十五歳でようやく到達した境地に、 わずか十八歳で到達するなんて!」 大山、泉、霧山、小田、陸奥、安田、半田、姿、 そして観ている者全員声を出せない! (なんという氣だ!これが、第二の神人合一に達した者の氣なのか!)  一十三は、ゆっくりと周りの景色を見渡している。 不思議だ。周りの景色全てが、凄まじい勢いで、金色の光を放っている! (なんだこれ・・・なんで世界がこんなに輝いてるの? ・・・美しい・・・この世界って、 本当は、こんなに美しいものなんだ・・・)  雹が、まばゆく光り輝く一十三の姿を見て、戦慄の眼差しを向ける。
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