第1章

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 一十三が目を覚まして起き上がると、大山が居た。 「大山さん・・・ここは?」 「ホムラメディカルセンターです。闘いが終わって、三時間経ってます」 「あ!・・・私、雹さん殺しちゃった?」 「はい・・・雹の肉体は、チリヂリに消えました。一十三さんの勝ちです」 「大山さん!武さんは?・・・武さんは、無事ですか?」 「それが・・・雹が死んでから、どこにも所在がつかめないんです。 無線を聞いてた人の話を聞いて、俺も探しましたが、見つかりません」 「そうですか・・・私が殺した様なもんですね・・・」 「それは、違います!」 「私、雹を殺したら、武さんも死ぬって、分かってたのに・・・ なんで最後、オリハルコン・ツイスターを撃ったんだろう・・・ あの時、私、とても不思議な感覚で、 武さんの事をすっかり忘れてたんです・・・最低ですね、人として」 「いいえ。違います。あの時、一十三さんは、 第二の神人合一の境地を会得したんです。もの凄いオーラでした。 一十三さんは、人類の為に、やるべき事をやったんです。 ただ、それだけの事です」 「ごめんなさい。大山さん・・・独りにしてもらえませんか?」 「わかりました」大山が、病室から出ていく。 一十三は、ボロボロと泣いていた。 武は、もうこの世には、いない。雹の言葉に嘘は無かった。  待合室には、特練棟メンバー、葉子、姿がいた。 大山が戻ってきたのを見て、葉子が「どう?一十三の様子は?」と訊く。 「今、気がつきました」 「わっ!良かった!じゃあ、みんな、行こう!」 と、葉子が立ちあがろうとしたその肩を、大山がそっと抑える。 「葉子さん・・・一十三さんは、誰にも会いたくないそうです。 今は、独りにしてあげましょう」 葉子は落胆し、座り直す。 皆、一十三の心境を理解していた。 世界を救う為とはいえ、愛する人の命と引き換えにした。 それが、どれほどつらい事か。 神田美鈴が口を開く。 「皆さん。今は、そっとしておきましょう。五十嵐さん」 「はい」 「報道陣はシャットアウトしてね。あとは、あなたに任せます」 「はい。お任せください」 神田は、それだけ言うと、特練棟へ戻ってゆく。 全員、神田の後に続いた。  
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