第1章

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特練棟では、メンバー以外、姿三四、橘葉子も居た。 大山と泉と半田の三人は、ここ三日間、食事と風呂以外、 ぶっ通しで、一十三の特訓に付き合っていた。 睡眠も休憩も全員とっていない。もう、体力と気力の限界が近かった。 特に、一十三の気迫はすさまじい。 自分のせいで、玄秋を死なせたという罪悪感が、 一十三の熱情を突き動かしていた。 だが、まだ、新技は出来る様になっていなかった。 泉はもう、限界になったのか、 「すまん。俺はちょっと、休む。起きていても、 これ以上する事がないからな」 と、大山の肩を叩いた。 「ええ。どうぞ。ここまで来られたのも、泉さんのおかげです。 有難うございます!」 「なあに。人類の未来がかかってんだ。 一十三ちゃんには、雹に勝ってもらわんとな」 そう言うと、泉は道場を出ていく。 それを見た半田も「大山くん。俺も限界だ。 君も、少し寝たらどうだ?夜の闘いの為に、 体力を温存しておいたほうがいい」 「・・・そうですね。一十三さん。一十三さん!」 「はい!」 「一十三さんも、少し休憩しませんか?もう三日間、ぶっ通しですよ!」 「いえ!皆さんは休んでください! 私はこの技が完成次第、寝ますから!もう少しで、できそうなんです!」 「分かりました!無理しないで下さい!」 こうして、大山と半田も道場を出て行った。 一十三は本当に、あまり眠くなかった。 今、最高潮に氣が研ぎ澄まされていた。 ただ、時々心臓に、ズキっと痛みが走る。 気力は充実していても、肉体を動かす為に、 心臓にはかなりの負担が掛かるのだろう。 たまに、フッと、気絶しそうになる。 「もう、時間がない。夜までに、 なんとかこの技が出来る様になってないと。 雹に勝たなきゃ・・・」 特練棟の大広間には、姿と橘の二人が、 一十三の心配をして、色々と話をしていた。 一十三とのこれまでの想い出を語り合っていたのだ。 「ねえ・・・やっぱり、様子見にいかない?」 葉子が思い切って姿に訊いた。 「でも・・・却って邪魔になるだけだと思う。 私達ができる事は、もう無いし、一十三を信じるしかないと思うよ」 姿は、葉子に比べると、冷静だった。
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