1.1.部屋

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 おじさんからカップを受け取った少年は、両手で抱えるようにして、本棚のある部屋のテーブルに慎重に運んだ。  おじさんは床に無造作に置かれたカバンからパンと袋に入った肉を取り出し、テーブルに置いた。スープを一口飲み、袋を開ける。中身の肉を平たい皿に載せた。パンにかじりつき、フォークで肉を口に運ぶ。  簡素な食事はあっという間に終わる。皿を片付けるのは少年の仕事だ。  食器を洗う少年の背中から、おじさんがまた声に出して本を読んでいるのが聞こえた。世界の終わりと失われた食べ物たち。滅亡した世界にはどんな食べものがあったのだろうか。そんなことを考えているのは楽しい。滅亡した世界ではどんなものを食べていたのだろうか。  山羊女の宮殿で鳴る夜を告げる鐘の音が世界の丸い天井に反響していた。明日は配給所に行って食料を持ってこないと、少年はふと、その食料はどこから来ているのか、考えてみた。いつかおじさんに聞いてみよう。聞きたいことは溜まっている。おじさんは教えてくれるだろうか。それとも教えてくれないのだろうか。そう思うと、なぜか悲しくなる。  鐘の音が徐々に消えていく。丸天井を照らす明かりも落とされていく。  居住区は夜を迎えようとしていた。
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