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生気を失い土気色になった敗者を、元剣士たちは無言で担ぎ上げる。死者は世界の果ての溝に投げ込まれるのが慣わしだ。誰もその理由は知らない。
少年は一度だけ元剣士たちの葬列を追ったことがある。背の高い元剣士たちは戦いに敗れた男の遺体を肩の上まで担ぎ上げ、無言で進んでいた。まだ小さかった少年は必死で走った。そうしないと追いつけない速さだった。少年が葬列を追うのをあきらめた時、元剣士たちの肩で揺られた遺体の首が向きを変えた。遺体の口から赤い血が垂れ落ち、ひとりの元剣士の肩を濡らした。血は剣士の汗と混じり、地面に赤い染みを作った。少年はその赤い染みを見た。
それがいつなのかはまったく覚えていない。おじさんと暮らしていたのか、それも分からない。少年の過去の記憶は常に曖昧だ。そもそも、それが本当にあったことなのか、それも分からない。
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