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空から幼女が降ってきた。
引きずる右足を補佐するために持つ左手の杖を手放し、そんな幼女をしたから待ち構える。
曇天が広がる空から枯葉が舞うように落ちてくる幼女を、男性は丸くて青い石が連なるブレスレットを嵌める左手のみで抱える。
背丈に似合わぬ丸太のような腕は、片腕しかない小さい体躯でも、華奢な幼女を支えるのに十分だった。
「何か・・・・・・食べ物を・・・・・・!?」
うわ言のように呟く幼女は、男性の姿を見るや否やその腕を振り払い、距離をとる。
2人の姿は対照的で鋭い視線で怒りを見せる幼女に対し、男性はまるで気にしていないかのような無表情だった。
「くそ・・・・・・! ・・・・・・せっかくだ、こいつで試してみるか」
呟くように話した言葉には、まだ性別に大きな変化の出ずらい幼女らしいどちらとも言えないハスキーな低い声。
その言葉は男性に届いてはおらず、傷の付いていない右目で幼女をしっかりと見つめていた。
「よく聞け人族! ボクは魔王軍参謀、最強の吸血鬼、シャルテット・ブリリアントだ!」
幼女の甲高い大声は、自らのゴスロリの服や赤い短髪の髪が浮き上がるほど。
さすがの男性もその鬼気迫る声に思わず一歩下がるものの、表情は冷静さを失ってはいなかった。
そして幼女の姿に変化が起き始める、大きく開いた背中から自らの身体と同じぐらいの大きな悪魔の羽、感情を表すような赤い髪は2つのドリルのように巻かれた髪が左右に垂れる。
空に溶け込んでいく甲高い怒声が聞こえなくなってきた頃には・・・・・・
その姿は吸血鬼として申し分ない要素が揃っていた。
「死ね!」
発声と同時に蹴った地面は土を抉り、走る先には風が起き、怪しく光る紅い目の線が残る、そして、男性の腹に紅い閃光の執着点を確認する。
幼女の細い腕が刃物の様に鋭い爪を筆頭に真っ赤に染まり、吸血鬼特有の八重歯を見せ、笑みを見せた。
「な!?」
しかし、再び紅い線を追うと、幼女の顔は自ら起きたことを理解出来ていない驚きの表情と声と共に、自らの服が青い矢によって地面に刺さり、僅かに動かした両手にも赤い矢が続いて刺さる。
男性を貫いた血だらけの右手も一緒に刺さる両手の焦げるような熱い感触に、顔を歪めながら見た傷だらけの男性の顔は、服越しに感じる冷たい空気と同じもの感じるほど変わって無かった。
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