第10話  おひとり様

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小さな声で言う彼女は ぎゅっと手を握り締めていた。 このタロットでは そこまでの時間は現さない。 真剣な眼差しに、 迂闊な事は言えないと ヨシキは少し緊張した。 「すごいなぁ、恋に夢中かぁ。 朱里さんと 似ているようでいて違うんだ。 朱里さんはあまり感情を 現さないけど、 この人は判り易いや」 「どうぞ、こちらへ。 いらっしゃいませ」 隣りから朱里の声が聞こえた。 いつものように、 挨拶だけは聞こえるが、 それ以上になると 小さすぎて聞こえなくなる。 もともと、ぽそぽそと 細切れのように話すのが 癖だったと朱里は 苦笑いで言うが、 お客によっては 誰にも聞かれたくない話を 持ってくるのだから、 その音量は合っているだろう。
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