第6話 隣の芝生…

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片側三車線ある 車道は少し坂道で、 そこを大きな音を立てて トラックが走って行った。 「… だよ」 「えっ!もう一回」 それに朱里は笑って答えず、 前を見たまま、 真面目な顔をして言った。 「私が見えるのは 細切れの映像でね、 なぜ、そんなのが 見えるのかも判らない。 後で結果を知って、 こうなるのか、といつも 悔やむばかりなんだよね。 だから、ちゃんとした力が ある訳じゃないよ」 「どういうの、ですか?」 「うーん、以前に新聞で 見た専門医の病院の記事を 思い出すと同時に 知り合いの顔が浮かぶ」 「はぁ」 「そしたら、しばらくして、 そこにその人が送られることに なった、とかね。 情報に繋がりが無くて 判断に困るし、言うに言えない 使えない力なんだよね。 だから妄想だと思うように しているんだぁ」
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