第7話 かぶせ物

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「お父さんは?お仕事なの?」 「お父さんは歯のお医者さん」 「ふーん。そうかぁ」 歯医者と聞いて 内心逃げ腰になるが、 ここは顔を引きつらせる だけに止まらせた。 朱里も通っているが、 治療中の自分の 百面相を見て、 医師も看護師も 良く笑わないで いられるものだと 感心したりする。 痛かったら 左手を上げてね、と言われて 上げても無視されるので、 眉だけが動かせるので 顔で抗議しているのだけれども、 ちっとも利かない。 きっと彼らは 歯にではなくて、 心に何かを 被せてあるのかもしれない。
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