第7話 かぶせ物

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「そうなんですか。 さっきの人はそんな事 言わなかったような」 手帳をポケットに しまいながら 朱里は笑みを 浮かべるだけで 取り合わなかった。 占い師も 自分の習った事すべてが 頭に入っているわけではなく、 とても興味が出るものと そうでないものに分かれて、 その中から 自分の武器となるものを 選んでいくので、 朱里のように選り好みなく、 一通り習った事が そのまま出て来る方が 珍しかった。 母親は前を見て放心したように しばらく黙っていた。 よほど心を占める何かが あるのだろうと思ったが、 朱里もあえて黙っていた。 言いにくい事は誰でもあるし、 聞いて欲しい人も 決まっているかもしれない。 こういう時は騒ぐことなく 相手の思うままにさせて、 気が向いたら聞くことが 一番お互いに負担が 掛からない事だと思っていた。
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