第7話 かぶせ物

20/34
前へ
/417ページ
次へ
心細そうな表情で母親を 見ていた少女を抱っこして、 揺り籠のようにゆらゆらと 体を動かしていると、 少女は朱里の胸に 頬を寄せて来た。 言葉で受けていなくても 母親の心の悩みを 何処かで感じ取って いるのかもしれない。 心配そうな小さな体を 朱里は、きゅっと 抱き締めた。 “大丈夫、大丈夫。 きっと良い方向に動くから“ 救いを求めて来る お客の大半は 問題解決に恐れをなして 元の生活に戻ってしまう。 すぐに現状を改善するには 大変な気力が必要で、 それをやり遂げられる者は その身に多くの困難と辛苦を 受けた者のみとも知っていた。 この小さな子にその任務が 与えられているのかは 判らないが、こうしている事で 少しでもそれが軽くなればとも 思った。
/417ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加