第7話 かぶせ物

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しばらくして母親は 小さな声で言い始めた。 「私の母は体が弱く、 その上、離婚もしていて、 そのせいで随分と私も 苦労しました。 バイトとか 学校が終わると すぐに行って、 休む暇もなく働いて、 どんな事もやって来たのに、 それなのに、夫は他の女を 作って出て行ってしまって」 男運のなさに呆れたと言って 彼女は苦笑いと共に ハンカチを握りしめた。 それらは朱里が見た映像と 差はなかった。 「そんな最悪な人生だったのに、 ようやくいい人に出会えて。 これを手放したくないんです」 「そうですね」
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