第7話 かぶせ物

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「判ります? わからないでしょう? 貴女のように 何でもお見通し、みたいなら いいかもしれないけれど」 「あ、それは違いますね。 お見通しではなくて、 覚悟するだけです」 「覚悟?」 半ば喧嘩腰で言う母親に 朱里は静かに言い置いた。 彼女に限らず、 切羽詰まってやって来る 依頼人は、今にも 溢れるような感情を 持て余していることが多い。 八つ当たりされるのも いつもの事だった。 特にこの母親の星は 雷鳴に例えられるように いきなり怒り出した と思ったら 何事もなかったように ケロリとして、と言うように 感情の起伏の激しさは 類を見ない星でもある。 朱里はその気持ちを 和らげるように、 ゆっくりと話し始めた。
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