第7話 かぶせ物

24/34
前へ
/417ページ
次へ
そう言って朱里は 呆気に取られる彼女に 笑って見せた。 何事も程々が良いと 言い切る方が、 説明するより早く 納得させられるのは 皆、どこかで 判っているのかもしれない。 占いは先人の知恵の 歴史だと思っている。 占い師はそれを覚えて、 自分なりに咀嚼して 人に伝えるだけの スピーカーみたいなものだ。 もっとも、 そのスピーカーの 出来が悪いせいか、 聞いてくれる者の数が 少ないような気がする、と 朱里は我を顧みて 苦笑いと共に思った。 「ヨシキさん、ゴミ箱に 連れて行ってあげてくれる?」 飲み終わった缶を 捨てに行こうとした 少女を待たせて、 近くにいたヨシキに言った。 「一人じゃ危ないから、 このお兄ちゃんと 一緒に行って来て」 男兄弟がいるせいか、 少女は臆することなく ヨシキの手を取って 歩いて行った。
/417ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加