第7話 かぶせ物

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写実的、一般には 映像記憶と言われるものを 持つ朱里は 机の上に“の”を書いた。 全ての記憶に 有効ならいいのに、 気まぐれなそれは 極稀に作動するので、 当てにはならず、 朱里としては内緒に したかったこともあり そんな何となく 恥ずかしそうな朱里を見て、 おかしくなったヨシキは ちょっと笑んだ。 「ほんとに朱里さんて 面白いですね」 「ほっとけ」 「あの女の子にも 聞かせたくない事が あったから、 歩かせたんでしょう?」 ニコニコしている ヨシキを見て、 朱里はややあってから、 ただ笑んで見せただけだった。 幼い子供に、 親の愛情はそのまま 受け取って欲しかったし、 親を疑う心を 被せたくはなかった。
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