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その頃は、占いに
興味があった訳でもなく、
なんとなく見ていたと
言う気がする。
見知らぬ女の人の写真、
線香の香りが漂う狭い部屋で
祖父と孫がぎこちなくも、
居心地の良い
雰囲気でいたのを
思い出す。
母が言うほど祖父は
人情がない訳ではなく
あれこれと聞く孫に
一つ一つ丁寧に
教えてくれたものだ。
良い思い出とは言い難いが、
そんなことを思い出して、
ヨシキはまた
ため息をついた。
一年中苛々しっぱなしの母に
甘える事は難しいが、
朱里ならばと言う気持ちが
ない訳でもない。
結局は母恋しさに
朱里の傍にいるのだろうかと
自問しかけて、
頭を振ったヨシキの耳に
お客の声が聞こえた。
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