110人が本棚に入れています
本棚に追加
/417ページ
小さな声で言う彼女は
ぎゅっと手を握り締めていた。
このタロットでは
そこまでの時間は現さない。
真剣な眼差しに、
迂闊な事は言えないと
ヨシキは少し緊張した。
「すごいなぁ、恋に夢中かぁ。
朱里さんと
似ているようでいて違うんだ。
朱里さんはあまり感情を
現さないけど、
この人は判り易いや」
「どうぞ、こちらへ。
いらっしゃいませ」
隣りから朱里の声が聞こえた。
いつものように、
挨拶だけは聞こえるが、
それ以上になると
小さすぎて聞こえなくなる。
もともと、ぽそぽそと
細切れのように話すのが
癖だったと朱里は
苦笑いで言うが、
お客によっては
誰にも聞かれたくない話を
持ってくるのだから、
その音量は合っているだろう。
最初のコメントを投稿しよう!