第10話  おひとり様

15/43

110人が本棚に入れています
本棚に追加
/417ページ
「そこのカーテンの隙間は 出入り口かい?」 「そうなんですよね。 ここだけ開くんです。 カーテンが足りなかったのかも」 「つまらんケチをしたのかな」 そう言って笑って、 立ち上がった老人を朱里は 丁寧に見送った。 「どうしたの?なにかした?」 こういう時、朱里は怒らない。 何か事情があってそうしたと 考えるようだった。 もちろん、 ヨシキも朱里の方に お客がいる時には 滅多に顔など出さないから、 そう受け取ってもらえるのは ありがたかった。 事の次第を伝えると 朱里は難しそうな表情をした。 「う~ん。記憶がない」 「朱里さんは あまり恋占いとかしないし」 「しない、ではなくて、 来ない、の」 苦笑いを堪える ヨシキの脇腹を肘で突いて、 朱里は鞄から取り出した ノートをめくった。
/417ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加