第10話  おひとり様

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「朱里さん、はい、どうぞ」 「んえ?おや、ありがとう」 昼過ぎの空には 鱗雲が見えた。 風も今日は おとなしい。 いつもの植え込みの柵に 腰かけていた朱里に コーヒー缶を 差し出したヨシキは、 隣に腰かけた。 あの騒ぎ以来、 朱里が何となく 静かになっているのが 気になっていた。 「朱里さん、 どうしたんですか? この頃暗いですよ」 「ん?そう?」 「うまく行ったから いいんじゃないですか? 彼女だって、これから 幸せになれるでしょう」 それに朱里は 苦笑いを浮かべ、 横に腰かけた ヨシキの雰囲気が ふと、懐かしい人を 思い出させた。
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