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「朱里さん、はい、どうぞ」
「んえ?おや、ありがとう」
昼過ぎの空には
鱗雲が見えた。
風も今日は
おとなしい。
いつもの植え込みの柵に
腰かけていた朱里に
コーヒー缶を
差し出したヨシキは、
隣に腰かけた。
あの騒ぎ以来、
朱里が何となく
静かになっているのが
気になっていた。
「朱里さん、
どうしたんですか?
この頃暗いですよ」
「ん?そう?」
「うまく行ったから
いいんじゃないですか?
彼女だって、これから
幸せになれるでしょう」
それに朱里は
苦笑いを浮かべ、
横に腰かけた
ヨシキの雰囲気が
ふと、懐かしい人を
思い出させた。
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