第10話  おひとり様

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「そうやっていつも すぐ触ったりするから、 男色家とか 言われちゃうんでしょうに。 その上、 ストーカーやって 前の所を辞めさせられた、 とか噂は出るし」 「えっ?」 慌てて その手を離したヨシキに ハセクラは にこやかに言った。 「まぁ、ね、 そう言うのは全部噂だから。 う、わ、さ。 僕は男も女も 両方好きですよ」 「朱里さんっ!」 「…懲りないヤツ」 ぼそっと言った 朱里の前で、 またヨシキの手を 握ろうとするハセクラと 逃げ回るヨシキの動きが 踊りを 踊っているようにも見えた。 「まあ、仲良くしましょう」 「ぼ、僕は、 席もそうですけど、 おひとり様の方が いいですっ!」 あって当たり前、 なくて困るもの、 それこそが空気、 そんな青い空の中に、 きっぱり言い切る声が 朱里の笑い声と共に 吸い込まれて行くようだった。 了
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