第12話 天より高く、海より深く

8/28

110人が本棚に入れています
本棚に追加
/417ページ
朱里の目には 奇妙な色の靄が彼女から 出ているように 映るのだが、 彼女自身は 平気な顔をしている。 ふと朱里の脳裏に 彼女に良く似た顔の 女性が浮かんだ。 しかし それには触れずに、 擦り傷の膝の手当の為に、 朱里は自分の席に 彼女を誘った。 好まざるものから 避けたくても こうやって 訪れてしまえば 覚悟を決めて 受け入れるしかないことも わかっていた。 「ここ、なんですか?」 「占いをする所です。 はい、少し沁みますよ」 机と椅子と 棚があるだけの狭い空間。 それらを取り巻くような 周りのカーテンを 見回しながら言う彼女は、 顔立ちもその雰囲気も、 何処か あか抜けない感じがした。
/417ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加