第12話 天より高く、海より深く

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傷の手当てを済ませて、 椅子に腰かけた朱里に おずおずと彼女は聞いた。 「あの、お子さん、 いらっしゃいますか?」 「え? あぁ、私ですか? おりますよ」 「そうなんですか。 いいなぁ、 こんな風に優しく手当なんて して貰った事なんてないから。 うらやましい」 朱里の中に 自分の母親との違いを見て、 朱里の子供に対しての羨望を 滲ませた彼女は、 ヨシキが買って来てくれた 温かい紅茶のペットボトルを 両手で握り締めた。 「私、いつも母に 怒られてばかりなんです。 嫌味も言われて。 貴女の為に言うのよ、とか、 貴女にはこうする方が いいと思うの、とか。 友達のことについても、 あの子は 止めた方がいいとか言われて。 あの、お子さんに そういう事って言いますか?」
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