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黒いスーツ姿が歩道橋を渡って、
こちらに戻って来るのが見え、
その姿を占い所の前で
見ていたヨシキは首を傾げた。
朱里はいつもなら
通りの店など気にもしないで
まっすぐに歩いて来る。
それがガラス窓を
覗き込むようにして
じっと見つめて、
時折、
自分の頬に手をあてて、
次の店の窓には
自分の後ろ姿を
映して見ていた。
「あれ?朱里さん、
いったいどうしたんだ?」
何かしたのだろうか、と
思っていると
表情の冴えない朱里は、
ヨシキの前に辿り着くなり
言った。
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