110人が本棚に入れています
本棚に追加
青いビニールシート、
段ボール箱、雑誌、
これだけ近くにいれば
十分なのに
触れてしまった事で
多くの事が見えて来る。
見たくもないものが
見える事に、
しかめ面で黙った朱里を
イダが引き寄せた。
「大丈夫か?」
「朱里さん!」
ヨシキの声に
朱里は目を開けてみせた。
「大丈夫。ヨシキさんは?」
「僕は平気です」
「それならよかった」
「良くないです!
いくら客でも
これはおかしい!」
「落ち着いて下さい。
占を観るものが
心を乱してはなりません」
その声は大きいものではない。
むしろ静か過ぎて
聞き入ってしまうほどだった。
ヨシキは黙って朱里を見つめ、
朱里はそれに頷いて見せた。
最初のコメントを投稿しよう!