第13話  花の色は

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青いビニールシート、 段ボール箱、雑誌、 これだけ近くにいれば 十分なのに 触れてしまった事で 多くの事が見えて来る。 見たくもないものが 見える事に、 しかめ面で黙った朱里を イダが引き寄せた。 「大丈夫か?」 「朱里さん!」 ヨシキの声に 朱里は目を開けてみせた。 「大丈夫。ヨシキさんは?」 「僕は平気です」 「それならよかった」 「良くないです! いくら客でも これはおかしい!」 「落ち着いて下さい。 占を観るものが 心を乱してはなりません」 その声は大きいものではない。 むしろ静か過ぎて 聞き入ってしまうほどだった。 ヨシキは黙って朱里を見つめ、 朱里はそれに頷いて見せた。
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