第13話  花の色は

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「落ち着いてね。 大丈夫だから」 それだけ言うと朱里は イダから離れて、 男の前に立った。 ヨシキはぐっと 拳を握りしめた。 「僕のお客です! 僕が責任を持って観ます!」 「ヨシキさん」 「ガキはすっこんでろ!」 乱暴な物言いと共に 突き飛ばされたヨシキは よろめいて 朱里に抱き止められた。 ちょうど唇が朱里の喉元に 触れるような形になって、 ヨシキは慌てて身を離した。 「大丈夫?」 「あ、すいません」 石鹸のような香りが ヨシキの鼻孔に残った。 そして、 光の加減なのかは 判らなかったが、 いままで朱里が こんなに薄い瞳の色を していたとも 気が付かなかった ヨシキは驚いたように 朱里を見つめた。
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