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「朱里さん、その目の色」
「ないしょ」
ちょっと笑みながら
そう言うと朱里は
男に向き直った。
こうやって
気持ちの乱れた人と
立ち会う事は
かつての朱里の
仕事でもあった。
ここまで大きく
暴れる人は珍しいが、
それ故に、
のっぴきならないものを
感じさせた。
「どうぞこちらへ。
お座りになって下さい」
「な、なんだよ、
あんたが占えるって
言うのかよ」
「朱里さん、僕が」
「大丈夫。
タカさんのお客様ですから」
ヨシキに優しくそう言うと
朱里は椅子に腰かけ、
しばらく瞼を閉ざした。
その口が開くと、
いつものゆるぎない口調の
朱里の声だった。
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