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朱里はタカからは
顧客の事など
誰一人として
引継ぎを受けていない。
当然この男の事も
初めて見る。
誰の気持ちを
受け取ってしまったのか、
叫びたくなるような心を
朱里は押し殺した。
「お帰りになられては
いかがですか?」
「出来る訳がないだろう!
もう逃げるしかないんだ!
何処に逃げたらいいのか
知りたいんだ!
そいつを聞きに来たんだよ!」
切迫したような声に
ヨシキとイダは黙った。
二人は
朱里と向き合うように
男の後ろに立ち、
朱里に何かしようものなら
取り押さえる気でいた。
イダは腕を組み、
朱里を見つめた。
朱里は表情も変わらず、
口調もいつものように
落ち着いた様子でいた。
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