第13話  花の色は

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朱里はタカからは 顧客の事など 誰一人として 引継ぎを受けていない。 当然この男の事も 初めて見る。 誰の気持ちを 受け取ってしまったのか、 叫びたくなるような心を 朱里は押し殺した。 「お帰りになられては いかがですか?」 「出来る訳がないだろう! もう逃げるしかないんだ! 何処に逃げたらいいのか 知りたいんだ! そいつを聞きに来たんだよ!」 切迫したような声に ヨシキとイダは黙った。 二人は 朱里と向き合うように 男の後ろに立ち、 朱里に何かしようものなら 取り押さえる気でいた。 イダは腕を組み、 朱里を見つめた。 朱里は表情も変わらず、 口調もいつものように 落ち着いた様子でいた。
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