第13話  花の色は

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「待っている、 と思うのかい?」 これまでの調子を がらりと変えて、 男は項垂れたままで 小さく言い、 それに朱里は 頷いて見せた。 「おいて行かれる者の気持ちを 察してあげて下さい」 その言葉にイダは眼を細めた。 一緒に習っていた当時から 朱里はあまり 自分の事を言わず、 家族の事を聞いた時に、 夫はいない、と 答えただけだった。 尚もしつこく聞いた時に 返された言葉がそれだった。 その時、イダは 少々面食らった顔で いたものの、 それならばと さらに声をかけたが、 朱里は頭を振ってこう言った。
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