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「喜びは分かち合えるけど、
悲しみはその人だけのもの。
だから、いいの」
表情を強張らせたイダに
微笑んだ朱里は
一度目を伏せて、
もう一度開いた時には
いつもの朱里だった。
はっきりとした
答えがあった訳ではない。
でもその一言が
心に残って、
引き寄せれば
抱き締められるような
距離にいて、
そうさせない何かが
朱里には備わっていた。
男は顔を上げて
朱里を見返した。
実感のこもった声音は
男でなくとも、
聞いた者の心を
揺さぶるようだった。
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