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「修一さんみたいな人には生き難い時代よ。あの人不器用だから、正義感強いんだけど、それに自分自身が押し潰されちゃうのよね、きっと」
「いたたまれなくなったのかな、親父」
結局あの家族会議では、緑の活躍もあってか両親の離婚は回避できた。
しかし修一は毎日のようにハローワークへ通っていたものの、いつまで経っても継続的な仕事に就くことは出来なかった。たまに月に一度か二度、単発の派遣があるくらいで、ほとんど毎日家にいた。何かに追い立てられるように必死でやることを探して、いつも率先して家事をやっていた。狭い家の中で、気恥ずかしそうに顔を背けて。
緑自身、そんな修一を見ているのは辛かった。
「……ねえ緑」
前を見ると杏子が俯いて洟を啜っていた。「あの人、何処行っちゃったのかしら」
あまり聞いたことのない母の声音に、緑は動揺した。
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