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それからしばらくの間、僕は体中のあらゆる器官から不満をぶつけられた。
胃が、
『食事の時はちゃんと噛んでください! 消化が大変です!』
肝臓が、
『おい、てめぇ、酒飲みすぎなんだよ! 処理するの大変なんだぞ?』
血管が、
『脂っこいモノは控えて』
そして脳が、
『言われた事をするだけじゃなくてさ、少しは僕を使って考えてよ。退屈しちゃうよ!』
などなど。
もう僕はヘトヘトになっていた。
もうこの「ボディリンガル」使わないぞ、そう心に決めた。
『あれ? そう言えばすい臓は? あいつも何か言いたい事があったはずでしょ?』
と、右目ちゃんが言った。
他の器官たちも不思議がっている。
『どうしたんだろう?』
『おーい! すいぞーう!』
すると、イヤーピース越しに呻き声が聞こえてきた。
『うっ……ううっ……あぁ』
とても苦しそうな声だ。
『おい、どうしたんだ、すい臓!?』
『く、苦しいんだっ……』
絞り出すような声に、器官たちは大騒ぎだ。
『おい、すい臓が苦しんでるぞ!』
『他の内臓たちはどうして気づかなかったんだ?』
『今はそんな事言ってる場合じゃないわ!』
『そうだ、病院へ行こう! おい、主! 今すぐに病院に行くんだ!』
器官たちは僕に、すぐに病院に行くよう指示してきた。
「え? でも……」
『でもじゃねぇ、今すぐに行けっ!!』
あまりにも器官たちがうるさいので、僕は病院に検査を受けに行った。
そして驚いた事に、すい臓に病気の兆候が見られたのだ。
初期の段階で発見できたので、大事に至らずに済んだ。
もしもこのまま放置していたらと思うと、僕は背筋にゾッとするものを感じた。
それ以来、僕は定期的にこの「ボディリンガル」を使っている。
毎回、小言はあるが、それで健康を保てるのなら安いもんだ。それに、彼らと話すのも意外に楽しいしね。
さて、最後に僕から一言。
この「ボディリンガル」を使う前には、これまで自分が体を大切にしてきたか良く考えて欲しい。
もし、不健康な生活を送っていたとしたら、体の器官たちはあなたに罵詈雑言をぶつけてくるだろうからね。
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