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ある日の深夜、僕はテレビの通販番組を見ていた。
そこで紹介されている商品はとても珍しいモノで、僕は興味本位で注文してしまった。
その商品の名は「ボディリンガル」。
説明を聞いていると、この商品を使えば自分の体と会話できるらしいのだ。
犬と会話できるというのは聞いた事があるが、自分の体ってのは初めて聞いた。
正直、冷やかしの気持ちで注文していた。まぁ、そんなに高くもなかったし、期待外れでもそんなに落胆はしまい。
そして、注文してから数日後。
例の「ボディリンガル」が届いた。
僕は期待半分、不安半分でその商品を取り出した。
その見た目を率直に言うと、黒い聴診器だった。
何だか安っぽい。
これは失敗したのかもしれない。
既に落胆しながらも、僕は説明書を読んでみた。
と言っても、別に読む必要も無かった。
使い方は聴診器とほぼ同じ。
イヤーピースを両耳に着けて、チェストピースの部分を胸とオヘソの中間に置き、電源を入れる。それだけだ。
「……」
何も聞こえない。
僕はガッカリしながらイヤーピースを外そうとした。だが、
『おい……おい!』
「え!?」
突然、イヤーピースから声が聞こえてきた。ちょっと甲高い男の声である。
『この間抜け! ちゃんと着けろ!』
「え? 何を?」
『そのイヤーピースに決まってんだろ! グリグリ押しつけやがって』
「あ、あ、はい!」
僕は言われるがまま、イヤーピースを着けなおした。
『よーし、いいだろう。楽になった』
声の主は満足げに言う。
「あ、あのー、あなたは……どちら様で?」
『あ? おめー、俺が誰か知らねぇのか?』
「えと、その、はい……」
僕の返事を聞くと、声の主は大きくため息を吐く。
『まったく……いいか? 俺はお前の右耳だっ! お前が音を聞く事ができるのは俺たちのお陰なんだぜ。それなのにお前ときたら、毎日毎日、綿棒で乱暴にかき回しやがって! 俺たちはそんな汚いわけじゃねぇんだぞ!』
「ひっ! す、すいません」
信じられない。
この声の主はなんと、僕の右耳だと言う。
この「ボディリンガル」が本物だという事だろうか?
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