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『おい、ちゃんと聞いてんのか? せっかく出来のいい耳を持ってんのによ。それとも脳の野郎がサボってんのか?』
『に、兄さん! いきなりそんな怒る事ないじゃないか! 初めて主さんと会話できるってのにさ』
何やら別の声が聞こえてきた。ちょっとおっとりした感じの男の子の声。
「えーと」
『あ、初めまして! 僕は左耳です。いきなり兄が失礼しました』
と左耳が自己紹介してくれた。
『ちょっと耳兄弟! あたしたちにも話させなさいよ!』
またまた別の声、今度は女の子の声だ。
「あの、あなたは誰?」
新たな声の主に僕は尋ねた。
『あたしは左目! そして――』
『あたしは右目!』
『いい? あたしたちはあんたに文句を言いに来たのよ!』
また怒られるのか……。
『あんたさぁ、空いてる時間はいつもスマホ、スマホォ! ちょっとはあたしたちの負担について考えなさいよ! 毎日毎日疲れちゃうわ! それと、指で擦らないでよ、痛くてたまらないわ!』
「ひっ! す、すいません」
確かにスマホを使いすぎていたかも……。
『あ、ついでにワシからも一言よろしいかな?』
さらに新しい声。今度は老人のようだ。
「あなたは誰?」
『お初お目にかかります。ワシは鼻です』
鼻は軽く咳払いをする。
『主殿、あなたはいつもワシの毛を切っておられますね? 身だしなみを整えたい気持ちはわかりますが、毛にも重要な役割があるのです。どうか切りすぎないようお願い致しまする』
耳や目と違い、鼻は静かに忠告してくれた。
うん、気を付けよう。
『次はおいらにも言わせてよ!』
明るい男の子の声。そろそろ混乱しそう……。
「えと、君は?」
『おいらは右手! 左手もここにいるけど、無口なんだ。と、それは置いといて、主さんに言いたい事があるんだよ』
あぁ、今度は何だろう?
『僕たちを洗った後、ズボンで拭くのはやめておくれよ。あれ、結構痛いんだよ? ハンカチかタオルを使ってね!』
「う、うん、気を付ける」
何だか申し訳ない気分になってきたな。
『よーし、お前ら言いたい事はもう無いな? では、俺が喝を――』
右耳が再び話し始めた。だが、
『待ちなさい! 主様に不満があるのはあなた達だけじゃない、私達内臓系も言いたい事があるのよ!』
あぁ! もう勘弁して下さいぃ!
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