第1章

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ぺりり。 俺はいつの間にか泣いていた。 そ、そうだ、玉ねぎのせいだ。 ぺりり。 うん、ぜったいこの玉ねぎのせいだ。 ペりり。 ・・・・・・いや、俺は泣きたかったんだ。 ペりり。 それと、あのころみたいに愛されたいんだ。 ぺりり。 他の誰でもなく、みゆきに。 俺の料理をメガネを曇らせながら誰よりもおいしそうに食べてくれる、みゆきに。 オニオングラタンスープができあがった。 泣き疲れたからか、その日俺はみゆきが帰ってくる時間まで起きていられず、泥のように寝た。夢も見ずに。 朝、食卓にメモが置いてあった。 「スープ、すごくおいしかった! なんでだろう、のぼるの得意な大根のピリ辛煮を思い出した 今度の土曜、久しぶりに港の見える丘公園に行こうよ みゆき」
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