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◇
おじさんに近くの川で行われる花火大会に誘われたのは、その二日後のことだった。
いつもと変わらないおじさんの態度は、先日僕が何か言いかけたことや泣いたこと、キスも何もかも綺麗さっぱりなかったことにしたようだった。
あの時ショックを感じて落ち込んでいた気持ちが、今は少々おじさんに腹を立てている。僕の悩みや決心、久住先生や柊平からの応援を、まったくなかったことにされたのだから。
それに、あんなに必要以上にキスをしたくせに。おじさんは相変わらず、自分は僕に忘れられないことばかりする。そんなの身勝手だ。
そして身勝手なことがもう一つ。
「うわあ、凪ちゃん可愛い」
「可愛いとか、おかしいでしょう」
「え? なんで? 可愛いよ」
おじさんの家を尋ね、インターホンを押すと、おじさんはすぐにドアを開けた。少し目を丸くした後、柔らかく細め、目尻に皺を刻む。僕は僕らしくもなく赤くなった顔を隠すように、おじさんを置いて先に歩き出した。
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