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「いやー、ごめんごめん。確かになあと思ってさ。好みが似てんだよなあ」
その言葉に、僕はどきりとする。好み、とは、僕を好きだと思ってくれている柊平と父を好きになった自分が、ということだろうか。それとも───
……何を期待してるんだ。馬鹿か。
「俺もギターやってた時期あってさあ」
「柊平は、すごく下手くそですよ」
「え、そうなの?」
馬鹿なことは考えない。
僕は一瞬浮かんだ馬鹿な期待に首を振り、柊平のちっとも上手くならないギターの話をする。おじさんは面白そうに柊平をからかい、柊平は不満そうな顔をした。本人は上達しているつもりらしい。
「そう言うけどな、凪は音楽のセンスなんかちっともないんですよ。音痴だし」
仕返しのように言う柊平だが、僕はちっともこたえない。
「別に僕の趣味でもないし。よっぽどのことがなきゃ歌うことなんてないし」
「うわー、開き直りー」
「おじさんは? 上手いの? ギター」
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