第四章

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 そういえば、おじさんの父とのエピソードはよく聞くが、どんな仕事をしていたのか、好きなことは何なのかはあまり聞いたことがなかった。ギターを弾いていたというのも、今初めて知った。 「俺もへたっぴー。高校の時に軽音部の奴に触らせてもらったのが楽しくて、大人になってから買ってみたってだけ。自己流でちょこっと弾けるくらい」 「なんだ」 「なんだって何よー」 「いいえ? 上手いなら聴かせてほしいなあって思ったんで」 「そこ、上手いならってつけるところが凪らしいけど可愛くねえ」  おじさんが苦々しく言ったのに、柊平まで同意する。 「そうなんですよ!  普通ちょっとは褒めません? 褒めてくれたこと一度もないですからね」 「褒められるような演奏してから言ってよ」  柊平が頬を膨らませる。それが可笑しくて笑ってしまう。  おじさんはそんな僕たちを優しい眼差しで見て、柊平に声をかける。 「いつか超上手くなって凪を見返してやれよ、柊平君」 「はい。今笑ったことを後悔させてやりますよ」
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