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柊平もぐっと親指を上げておじさんに答える。気安いやり取りは、まるで親子のようだ。
しかし柊平がいつかギターが上手くなったとしても、その時この人はこの世にいない。それが悲しかった。
僕を置いて会話を続ける二人には、暗い影はない。明るく話し、まるで死の気配を振り払っているかのよう。
「二人、親子みたいだ」
だから僕も、そうしよう。明るく、死を遠ざけられるように話そう。
「はは、いいですね。柏木さんが父親だったら楽しそうです」
楽しそうな柊平とは違い、おじさんは柔らかく目を細めた。
「変な話だけどさ。俺に子どもがいたらこんな感じかなって、柊平君見てて思ったよ。ほんと、ゲイなのにおかしな話だけどさ」
おじさんは、家族が欲しかったのだろうか。パートナーさえ持たずに、生きてきた人。前にかけがえのない友人はできたと言っていたが、この人には家族がいない。
父を好きになった、同性愛者である自分を誇れると言った気持ちは本当だろう。けれど確かに、寂しさを感じている。
柊平が部屋から出て行った後、微笑みを浮かべるその横顔を見て、僕はそう思った。
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