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「僕はおじさんにとってそんな存在には、なれないです……」
「倉田君はいくつだっけ?」
「二十一です」
久住先生はそうか、と言ったあと少し口を閉ざす。
「まだ若い……というより、幼い、か」
僕はうつむいたまま微かに笑う。
幼い……そうだな。ずいぶんと幼い。子どものように怯え、おじさんと会うたびに感情的に泣き叫びたくなることばかり。それなのに、会いたい会いたいと病院に通い、後悔を重ねる。
「そうです……ガキです。自分の持つ気持ちさえ受け止めきれない、ガキです」
想いが募る。自分は死の淵に立っているというのに、僕にかける声が、僕を見る瞳が、僕に触れる唇が温かくて、優しくて。会うたびに好きになっていく。
「怖い……怖いんです……っ」
柊平は強い。おじさんと仲良くなるのが怖くないのか。どうしたらあんな風に笑える? 息子みたいだと、あんな風に楽しませることができる? 明るく、おじさんの死の気配を振り払える?
僕は、怖くて、怖くて。笑うだけで、必死になって。歪な笑顔しか浮かべられない。
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