第四章

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「ごめん。込み入ったことを話しすぎてる自覚はあるから、嫌だと思ったら言ってね」 「いえ……」 「倉田先生がすでにこの病院にいないと知った時、柏木さんは生きる気力を失ったように思った。外来には通ってきていたけど、自棄になっているように感じてた。それがここ数週間、笑顔が多くなった。外来に来た時も、痛みや苦しみがよくなったっておっしゃってた」  それは、僕の顔が父に似ているからだ。父に似ているからおじさんは…… “なんか最近あんま湊に似てると思わなくなったんだよな。俺の気の持ちようなんだろうけど、湊と凪は似てないな” 「あ……」  僕と父が似ていないと言ったおじさん。なら、僕と、僕自身と、一緒にいることで、笑顔に……? いや、僕が父を、目を使って見せていることもあるのかもしれないけど。でも……。
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