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「コウ……俺のパートナーね。コウの家の養子になるつもりだった。そういうかたちで“家族”になろうとしてたんだ。それを決めたのが俺が高校生のとき。俺がちゃんと医師になったらって約束だった」
僕は驚いて久住先生を見つめた。久住先生は穏やかに笑う。
二十一歳の僕のことを幼いと言ったが、その僕より幼かった高校生のときに、久住先生は今後の人生を決める重大な決断をしていたんじゃないか。
「当時の俺が考えた、精一杯の一生一緒にいられる方法だった。コウも喜んでくれたよ。コウの両親も、協力してくれた。でも、そう上手くはいかなくてね」
息子を養子に出すということを、両親が受け入れられなかったからだったと、久住先生は言った。
途中、こんなことまで聞いてよいのかと話を止めようとしたけど、先生はかまわないと笑った。自分の経験が、同じ立場にある人の参考になることを知っているから、求められれば話すようにしているのだと言った。
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